• 184 中勘助 銀の匙 112(後編6③) @ LeoN Radio 我らの文学

  • Jul 17 2024
  • Length: 29 mins
  • Podcast

184 中勘助 銀の匙 112(後編6③) @ LeoN Radio 我らの文学  By  cover art

184 中勘助 銀の匙 112(後編6③) @ LeoN Radio 我らの文学

  • Summary

  • ラジオ収録202400612

    「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)中国語訳監修 李可心 孫軼凡


    翌あさ海はすつかり霧にとざされてゐた。さうしてそのなかを漕いでゆく櫓の音がひどく私を喜ばせた。舟はみえずに音だけがなにかの鳥の鳴くやうに、獣の仔の乳をもとめる声のやうにきこえる。

    <霧に閉(と)ざされる→霧に覆われて先が見えない状態、五里霧中。漕(こ)いで。櫓(ろ)→船の後部左舷に固定された突起物。船を漕ぎ進める用具。獣(けもの)> 

    第二天早上,浓雾把大海遮得严严实实。雾中传来的摇橹声让我很开心。海面上看不见船,只听得见船的声音,像鸟叫,又像小兽崽急着吃奶。


    お友達がきていつしよに浜へでた。砂も、石も、波の形にうちあげられた海草もみんなしつとりと朝露にぬれて、昨夜ゆうべあんなにたんと鳴いてた虫があちこちに ちち、ちち と可愛く鳴きのこつてゐる。

    <朝露(あさつゆ)→朝降りた露、消えやすく儚いもののたとえ。たんと→数量、程度の多い、たくさん、たっぷり。たんと召し上がれ!>

    哥哥的朋友来了,我们一起到海滩上去。沙子,石头,随着海浪的形状被潮水带到岸上的海草都被晨露浸得濡湿,昨天晚上叫的沸反盈天的虫子如今只是四下里“唧唧、唧唧”地发出可爱的低语。


    平地と傾斜した浜との境にもりあがつた砂丘には雑草や風に吹きためられた黒松がへばりつき、すつきりした漁船が曳きあげられて、舟をすべらすための枠、鳥の巣みたいな生けす、あか汲み、縄、海胆うに、ひとでの殻なぞころがつてゐる。

    <生(い)けす→取った魚を一定期間飼っておく水槽。あか汲(く)み→船底に溜まった水を汲み取ること、または汲み取る杓(ひしゃく)、海胆(うに)→生うに、。雲丹(うに)→塩ウニなどの加工品。ひとで→海星→星形の海の動物。>

    平地和向海中倾斜的海滩之间有隆起的沙丘,上面杂草丛生,或牢牢生长着被风吹得堆在一起的黑松。那里有光滑的滑道,方便把渔船拉上海岸或拖下海。还有像鸟窝一样的水塘、从船里舀水的舀子、绳索,以及海胆、海星等软体动物的外壳。


    暫らくして霧がはれ、紺青に底光りする海のうへに朝日があかあかとのぼつてむず痒く汗を滲ませるころ砂丘のあひだの小路から漁師や女子供たちががやがやおりてきて地曳きをひきはじめた。

    <紺青(こんじょう)→紫色を帯びた暗い青色。底光(そこびか)り→奥底に光が潜(ひそ)んでいるように見えること。汗を滲(にじ)ませる→ある様子がうっすらと感じ取れる。地曳き→沖合に弧を描くように張った網を陸上に引き上げること。

    不久,雾散了,红彤彤的朝阳从深蓝色泛着光的海上升起,照得人渗出一层刺痒痒的薄汗。沙丘之间的小路上走来渔夫和他的几个女儿,吵吵嚷嚷地沿着海滩下到海边,

    开始拉网捕鱼。


    えん、えん としづかに声をかけながらひと足ひと足とひきあげるあひだにここかしこにつまれたてん草は火をつけられてぷすぷすと白い煙をはく。

    <ここかしこ→あちらこちら。てん草→赤藻類の総称で寒天、心太(ところてん)の原料となる海産。>

    他们“嘿、嘿”地低声喊着号子,一步步将渔网拽上岸。周围堆起来的石花菜被人点了火,扑哧扑哧地冒着白烟。

    Show more Show less
activate_primeday_promo_in_buybox_DT

What listeners say about 184 中勘助 銀の匙 112(後編6③) @ LeoN Radio 我らの文学

Average customer ratings

Reviews - Please select the tabs below to change the source of reviews.