• 185 中勘助 銀の匙 113(後編6④) @ LeoN Radio 我らの文学

  • Jul 18 2024
  • Length: 33 mins
  • Podcast

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185 中勘助 銀の匙 113(後編6④) @ LeoN Radio 我らの文学

  • Summary

  • ラジオ収録202400619

    「レオンラジオ日の出」テーマ曲 作詞作曲 楠元純一郎 OP「水魚の交わり」、ED 「遺伝子の舟」司会 楠元純一郎 中国語翻訳・朗読 レオー(中国語講師・中国大慶の小学校美術教諭)朗読 松尾欣治(哲学者・大学外部総合評価者)読解者 福留邦浩(国際関係学博士)


    そのうちに兄はひとり向ふの岩まで泳いでいつたので私は雨のときだけ川になる水溜りへはひつて石や貝をひろひはじめた。そこにはたくさん寄居蟹やどかりの子がゐて、ちよいとみればただの貝殻みたいにみえるがすこしたつと手をだしてひよこひよこ歩きまはる。尖つたのや、円いのや、勝手次第の殻にゐて、それでどれも寄居蟹の子なのがをかしい。

    <水溜(みずたま)り→窪みに水がある様子。ヤドカリ→主として巻貝に体を入れてそれを背負って生きる甲殻類の一種。ちょいと→ちょっと。すこしたつと→少し時間が経過すると。ひょこひょこ→小刻みに上下左右、跳ねるように動く様。>

    没过多久,哥哥一个人游到了海角另一端的岩礁那里,我跑到下雨时才会汇成小河的水塘边捡石子和贝壳。水塘里有很多小寄居蟹,很多时候我以为我看见的是一只贝壳,过了一会,它竟伸出触手,轻快地走起路来。寄居蟹们有的住在尖尖的贝壳里,有的住在圆贝壳里,找个壳子随便一钻便是。于是那些空壳里面全部都是小寄居蟹,十分搞笑。


    お友達はどこからか長さ二寸ばかりの法螺貝の殻をみつけてきてくれた。ちやうど細い紐がとほせるぐらゐの孔がふたつつあいてゐる。

    <二寸(にすん)→6.0606センチメートル、一寸(いっすん)→3.03センチメートル。法螺貝(ほらがい)→日本の南部に生息する巻き貝の一種で、褐色、白色の波紋がある。山伏など修験者が吹いて音を出すもの。孔(あな)。

    哥哥的朋友不知从哪里见到一只长两寸多的法螺贝壳,把它送给了我。贝壳上有两个孔,大小刚好能穿过细绳。


    で、家へ帰つたら姉にもらつた洋傘の総をつけよう なぞと思つてるところへ兄があがつてきて両手にもつてる貝や石をみんな棄ててしまへといふ。

    〈総(ふさ)→束ねた糸の先をばらばらにしたもの、たくさん群がって長くついたものから転じて、垂れているもの。〉

    我正想着回家后要拿姐姐送我的阳伞上的穗子穿进去,哥哥上了岸,要我把满手的贝壳石子全部扔掉。


    私はしかたなくさも惜しさうにひとつ棄て、ふたつ棄て、たうとう残らず棄ては棄てたが、その貝だけはどうしても棄てかねてもぢもぢしてたら腹をたてて拳固をふりあげたのをお友達がとめてそれひとつだけをもつて帰ることに不承ぶしように納得させた。その法螺貝は今でも古い玩具箱のなかにちやんと総がつけてしまつてある。

    〈惜しい→大切なもの、価値のあるものを失って残念だ。棄てかねて→棄てることができなくて。もじもじ→遠慮、気後れから躊躇(ためら)い、落ち着かない様。腹をたてて→怒って。不承不承(ふしょうぶしょう)→いやいやながら、しぶしぶ。しまってある→収納されている。>

    我只好可惜地扔掉一个又一个,最后什么都没留下,唯独那位朋友送我的贝壳无论如何也不舍得扔。哥哥看我磨磨蹭蹭的,气得要挥拳打我。他的朋友拦了下来,好说歹说地劝服他,让我只把那一只贝壳拿回家。那只法螺贝如今还系着穗子,完好无损地躺在旧玩具箱里。

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