Episodios

  • 生成AIに多額の資金が流入
    Sep 3 2024
    弊社欧州テーマリサーチ責任者のエド・スタンレー(Ed Stanley)が、ベンチャーキャピタルは暗号資産のスタートアップに慎重姿勢を取る一方で、生成AI関連への投資は増加の一途であることを説明します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回はプライベートマーケットから分かる画期的技術の実用性と投資可能性について、弊社欧州テーマリサーチ責任者のエド・スタンレー(Ed Stanley)が解説します。このエピソードは9月3日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社はこの3年間、既存の上場リーダー企業のディスラプトを目指す新興技術や企業の一歩先を行くために、ベンチャーキャピタルの資金調達を追跡してきました。プライベートグロースエクイティ市場は、まさにその定義通り、長期であり、したがって金利サイクルから非常に影響を受けやすいといえます。資金調達が容易だった2021年と2022年に、ベンチャーキャピタルは1兆2,000億ドル近い資金を調達しました。これはそれ以前の10年間の合計額を上回る金額です。しかし、上がるものは往々にして下がるもので、ベンチャーキャピタルのグロース投資はピーク時から6割以上減少しました。金利が徐々に上昇し、5%を超えたためです。したがって、弊社エコノミストが予想するように今後12カ月で金利が3.5%に低下すれば、M&AとIPOのボトルネックは解消するでしょう。そして、資本配置と資金調達環境も改善すると思われます。しかし、現在の資金調達市場と、今後数カ月および数年にわたる回復は、インターネット時代になって以降のどの時期と比べても一段と不均衡であるように見えます。資本コストがかからなかった時代にはクリーンテックや医療イノベーションや電池のスタートアップ企業に数百億、数千億ドルの資金が大河のごとく流れ込みましたが、今ではごく小さな流れに細っています。それとは対照的に、AIのスタートアップにはベンチャーキャピタルが2024年に入って以降これまでに調達した合計資金の半分近くが流れ込んでいます。AIと暗号資産のスタートアップほど投資優先度で明暗が分かれたものはないでしょう。ベンチャーキャピタルは過去10年間に790億ドルを費やして、非代替性トークン(NFT)からゲームまでに及ぶ暗号資産のキラーアプリ、つまり分散型金融アプリを見つけようとしてきました。わずか3年前には、ブロックチェーンアプリを構築するスタートアップはプロジェクトの資金調達と暗号資産の価格がほぼ1対1の関係でした。それが今では、主要な暗号資産の価格は2021年のピーク時から1割程度しか下がっていないにもかかわらず、ブロックチェーンのスタートアップの資金調達は75%も落ち込んでいます。ブロックチェーンにはプロダクト・マーケット・フィットとリピートユーザーという問題があります。一方、生成AIにその問題はありません。どちらも消費者と企業の導入レベルは高く、しかも上昇しています。生成AIは弊社が追跡するユーザー指標のすべてで暗号資産をあっという間に追い越しました。そして資本の提供者も相応に対応しています。投資家は一斉にAIのスタートアップに視線を変えており、それが止む理由は見当たりません。同じことが実物資産や上場企業でも起きています。例えば、同僚のStephen Byrdはここしばらく暗号資産マイナーに対し、手持ちのインフラをAI訓練用に用途変えした方が経済的に理に適いつつあると述べています。上場している暗号資産マイニング企業の多くは同じように考え、同じ結論に達しています。ただし今は、上場企業にこのAIインフラ投資の投下資本利益率がどれくらいなのかという質問が寄せられているように、プライベートマーケットでも、AIのキラーアプリの発見と資金提供にかつてないほど集中している状態が、資金の有効な使い方なのか、それとも暗号資産ブームの二の...
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    6 m
  • 弱い雇用統計が株式市場を下押す
    Sep 9 2024
    8月の雇用統計が予想よりも弱かったことを受け、FRBはハードランディングに対する懸念を如何にして払拭するのか、弊社CIO兼米国株のチーフストラテジストが解説します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は米国労働市場が株式市場に及ぼす影響について、弊社のCIO兼米国株のチーフストラテジストのマイク・ウィルソン(Mike Wilson)が解説します。このエピソードは9月9日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。私は先週、労働市場が株式市場にとって重要であることを詳しく述べたレポートを発表しました。その中で重要なポイントとして、7月の労働統計は予想よりもかなり弱かったものの、その後S&P 500は金利、通貨、コモディティといった他の「マクロ」市場よりも大きく回復していることを指摘しました。そして、雇用統計が再び加速に転じない限り、S&P 500の動きはファンダメンタルズから外れていると締めくくりました。この1週間に発表されたいくつかの労働市場データは、予想を下回りました。まず、7月の労働動態調査では求人件数が770万件と、コンセンサス予想の810万件を下回りました。6月の改定値も27万4,000件下方修正されました。これは基本的に、7月の弱い雇用統計が実は荒天やその他の一時的要因によるものではない可能性を裏づけています。2番目に、求人率は4.6%に低下し、FRBのウォラー(Waller)理事が失業率の上昇ペースが速まる目安として挙げた4.5%に接近しています。3番目に、FRBが先週発表した地区連銀経済報告によると、経済活動は鈍く、12地区のうち9地区で横ばい、あるいは減少しています。ただ、労働市場に関する説明はネガティブというよりもむしろニュートラルでした。これらのデータはコンファレンス・ボードの雇用トレンド指数とぴったり一致しており、雇用トレンド指数は労働市場の方向性を総合的に測る非常に客観的な指標だと私は考えています。コンファレンス・ボードが9日朝発表した最新の8月の雇用トレンド指数は軟化基調が続いているとはいえ、必ずしも景気後退を示してはいません。もちろん、先週の最大のイベントは金曜日に発表された月次の雇用統計と失業率でしたが、就業者数の増加はコンセンサス予想を下回る14万2,000人にとどまりました。それに加えて、先月の発表値が11万4,000人から8万9,000人に下方修正されました。一方、失業率は数ベーシスポイント低下し、投資家は7月の雇用統計が実際よりも弱く見えていたと確信するには至りませんでした。雇用など経済成長指標の多くが引き続き下方に傾いていることから、マクロ市場(金利、通貨、コモディティなど)はハードランディングとなるリスクを株式市場よりも多く織り込んでいます。これが最も顕著なのは、おそらく2年物米国債でしょう。先週金曜日の時点で、2年物米国債利回りとフェデラルファンド金利の差は過去40年間で最大の水準となりました。これは債券市場がFRBの金融緩和が後手に回っていると判断していることを示しています。金曜日の株式市場はこの見解に沿った動きに変わり始め、雇用統計に対する政策対応として9月に25bpの利下げが妥当なのかどうかを疑問視し始めました。株式市場が依然として割高で、平均的な利益成長率をかなり上回る前提であることを踏まえると、先週金曜日の調整はしごく妥当に思えます。私の見立てでは、債券市場がFRBは後手に回ってはいないと考えるようになるか、雇用統計が反転して大幅に改善するか、あるいは追加の刺激策が導入されるまで、株式市場でリスクオンのムードは広がりにくいでしょう。したがって、株価指数全体でバリュエーションが試される可能性が高く、市場のけん引役はディフェンシブ色が強まり、弊社が推奨するセクターと銘柄に一致するでしょう。FRBが先手を打つ道筋は2つあると考えます。ひとつは予想よりも早い...
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    7 m
  • 注目の米雇用統計
    Aug 27 2024
    米国の8 月の雇用統計が近く発表されます。今回は、モルガン・スタンレーのCIO兼米国株チーフストラテジストのマイク・ウィルソン(Mike Wilson)が、なぜこの指標が強い数字になることが求められているのか、また、そうならなかった場合に市場で何が起こり得るのかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社CIO兼米国株チーフストラテジストのマイク・ウィルソン(Mike Wilson)が、目先の資産価格に対する経済指標の重要性について解説します。このエピソードは8月27日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聴きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。株価は8月5日に直近の安値をつけてから上昇基調が続いています。この期間、米失業保険申請件数、ISMサービス業購買担当者指数など、いくつかの経済指標が市場予想を上回りました。こうした値動きは、短期的にはリスク資産が今後も成長に関する観測頻度の高いデータに反応し続けるという見方を裏付けるものです。以前弊社が算出した米S&P 500株価指数のフェアバリューのレンジは5,000-5,400ですが、成長に関する経済指標の改善が続けば、相場はこれを上回る水準を維持することも可能になるでしょう。私の見解では、市場にとっての本当の試練は、9月6日に発表される8月の米雇用統計です。就業者数が予想を上回り、失業率が低下すれば、市場は成長リスクが差し当たり後退したと自信を持てるようになるでしょう。一方、今回も弱い内容で、失業率の一段の上昇が明らかになれば、成長懸念が再び素早く表面化し、先月のような株価調整につながる可能性が高いと考えられます。心配なことに先週、今年3月までの12ヵ月間の就業者数が予想より大幅に下方修正されました。この下方修正により、次の雇用統計の改善圧力はさらに高まっています。一方、ブルームバーグの経済サプライズ指数は4月以降の低迷をまだ脱しておらず、シクリカル銘柄はディフェンシブ銘柄との比較で下降傾向が続いています。これについて我々は、経済成長が実際に改善していることを示す証拠がより多く見られるまで、ポートフォリオ内でディフェンシブセクターを選好するのが理にかなっているという見方を支持するものだと考えています。また、先週発表の物価統計は軟化を示しましたが、これは価格決定力の低下を意味することから、比較的クオリティの低いシクリカル銘柄にとって明確な支援材料になるとはみていません。ただ、物価統計が望ましいものとなったことで、FRB(米連邦準備制度理事会)による9月の利下げ開始が実質的に確定したのは事実です。現時点でまだ議論されているのは、どれだけ利下げするか、ということだけです。この1年、FRBの金利を巡る市場の期待は揺れ動いてきました。今年初めには年内に25ベーシスポイントの利下げが7回あると織り込まれていましたが、4月までにはこうした予想がほぼなくなりました。現在は年内にほぼ4回相当、25年には5回の追加利下げが織り込まれています。最初の利下げが25ベーシスポイントになるか50ベーシスポイントになるかを巡る予想を反映した債券市場の動きは、今月かなり激しくなっています。直近では、先週の経済成長・インフレ指標が予想を上回ったことで、市場は25ベーシスポイントの利下げを予想する方向に傾いています。ここ数週間で分かったことは、労働市場の低迷と時を同じくした50ベーシスポイントの利下げを株式市場は必ずしも望んでいない、ということです。こうしたシナリオの下では、利下げはもはや保険ではなく、ハードランディングのリスクを防ぐために必要な措置とみられる可能性があります。つまり、今後は安定成長とともに25ベーシスポイントの利下げが繰り返される状況が、株価にとっては最適といえるのかもしれません。難しいのは、PER(株価収益率)は21倍で、コンセンサス予想が既に今年10%、...
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    7 m
  • 消費者心理を押し上げる要因は何か
    Aug 26 2024
    モルガン・スタンレーのテーマ別リサーチ・ストラテジスト、ミシェル・ウィーバー(Michelle Weaver)が、政治情勢の変化、新学期準備に向けた支出の好調、旅行業者が享受するコロナ禍後の旅行需要を踏まえた、消費者心理の改善について解説します。このエピソードを英語で聞く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」Thoughts on the Market へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、モルガン・スタンレーの米国テーマ別リサーチ・ストラテジスト、ミシェル・ウィーバーが、このところの市場ボラティリティと、来たるアメリカ大統領選挙が米国の消費者に及ぼす影響について考察します。このエピソードは8月26日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は概要欄に記載しているURLをクリックしてください。数週間前、市場のボラティリティが急激に上昇しました。一部は、円キャリートレードの巻き戻しによるものでしたが、米国の経済成長鈍化、あるいは景気後退の可能性を巡る懸念が再浮上したことも背景にあります。ただ、弊社エコノミストは景気後退入りするとは見ておらず、ソフトランディングするとの従来の見方を弊社ベースケースとして据え置いています。つまり、景気鈍化であって、低迷ではない、というものです。企業側からは、今回の決算発表により、米国の個人消費が徐々に軟化していることが分かりました。ただし、これは急激な落ち込みではありません。今年の支出は減速してはいるものの、ここ数年間の支出が大幅に高い水準にあったという理由によるものです。第2四半期決算では確かに、個人消費に部分的な鈍化が見られました。消費者心理はいまだ健全であり、7月に弊社が実施した最新の調査では、消費者心理のかなり大幅な改善が示されました。これには一部、政治的環境が影響したと弊社では見ています。我々は、バイデン大統領が大統領選からの撤退を表明し、ハリス副大統領を候補に指名した直後の7月25日から29日にこの調査を実施しました。この時に消費者態度が最も大きく改善したのは、政治的中道派を自認する層でした。この層の、景気に対する消費者心理を指数化したところ、マイナス23%からマイナス1%に改善していることがわかりました。消費者期待もまた、リベラルを自認する層で大きくプラスとなっています。極端なリベラル層の消費者心理はプラス34%であった一方で、中程度のリベラル層ではプラス20%でした。保守層の消費者心理は依然マイナスでしたが、前回調査に比べ改善していました。こうした消費者の期待および態度の向上は、政治的環境と大統領選に寄せられる関心が一新したことが一因と考えられます。夏の終わりが近づくこの時期の、重要なトレンドを新たに2つ、お伝えしたいと思います。新学期に向けた準備品の需要と旅行についてです。新学期用品については、かなり良好な結果が弊社の調査で示されました。今回の新学期に向けては、前回よりも支出を増やす計画があると消費者は回答しており、支出の意向は35%増加しています。また、支出意向の内訳を見ると、衣料品に対する支出計画の純増が前年比で最大となりました。一方で、学用品と電子機器への需要も伸びています。よって、学童および学生の新学期開始にあたっては、どの項目も非常に重要と考えられます。旅行は、コロナ禍後に大きく好調を維持した市場の一つです。外出や旅行を伴う休暇が大いに人気を集めました。過去数年間の需要水準は、正直なところ、予想以上のプラスとなりました。コロナ禍後のこれほど急激な需要のキャッチアップと、これほど多くの人々の期待は弊社には予想外のものでした。私自身も同じく、ここ数年間の夏季休暇は特に旅行を楽しみにしていました。しかし、今回の決算発表では、旅行業界はむしろ強弱まちまちの様相を呈し始めています。ホテルは全般的にレジャー目的の宿泊需要に鈍化の兆しが見られますが、ビジネス目的では堅調を維持しています。一方で、航空各社からは異なる状況...
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    6 m
  • 移民が世界経済にとって重要な理由
    Aug 19 2024
    今回は主要国の移民政策の厳格化が経済成長とインフレに与える影響について、弊社グローバル・チーフエコノミストのセス・カーペンター(Seth Carpenter)が解説します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社グローバル・チーフエコノミストのセス・カーペンター(Seth Carpenter)が、移民政策が各国の経済に与える影響について解説します。このエピソードは8月19日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聴きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。移民は世界経済にとって重要な要因の一つとされ続けてきました。当然ながら、移民は所得の低い国から高い国に移動することが多く、過去50年余り、高所得国の経済成長を年間でおおよそ0.3ポイント押し上げてきました。ただ、ここ数年はいくつかの出来事が移民の動向に影響を及ぼしています。1つは新型コロナウイルスです。パンデミックの最中(さなか)では国境をまたぐ移動が制限され、移民の流入がしばらくの間、減少したり、停止したりしました。ここ2年で大幅に回復したとはいえ、多くの国や地域では、移民の流入がコロナ禍前の水準に戻っていません。もう1つは地政学的な不安です。例えば、ウクライナ危機により、避難民は第二次世界大戦以降、欧州で最大規模の人口移動を招き、その影響は世界に広がっています。では、移民がどのように経済に影響するのでしょうか。この点については、移民が全体の需要と供給の両方を押し上げる可能性がある、と見ています。需要と供給それぞれが部分的に、さらに双方の相対的な重要性が、インフレもしくはディスインフレの度合いに影響を及ぼす可能性が高いからです。米国では、2023年に大量の移民が労働市場に流入し、インフレ率が低下しました。が、同時に経済も成長しました。供給の効果が需要の効果を上回ったためです。一方、オーストラリアではこれとは反対に、学生など労働市場に含まれない移民が多く流入したことで、物価が上昇しました。需要の重要性が相対的に高くなったため、住宅市場を中心に価格が上昇しました。ただ、移民の影響はしばらくしてから表れることがほとんどです。先進国の多くは経済活動の拡大ペースが人口増加のペースを下回り、生産性が低下しました。しかし、これは単に、設備投資の増加が労働力の拡大を追う形で実現するためと考えられます。長期的に見れば、移民は人口減少を補う役割も果たすことになります。2021年以降、高所得国の多くは、移民を除いた場合、人口増加が̠マイナスとなっています。高齢化による人口減少が基本線となれば、経済成長を維持し、公的債務を管理することははるかに難しくなるでしょう。移民のトレンドは、ほとんどの国で2024年から2025年の間にコロナ禍前の水準に戻ると我々は想定しています。このデルタが最も大きいのはカナダやオーストラリアなど、移民の流入ペースが特に高い国においてです。それ以外の国では、政策や文化的規範などが移民の方向性を決めることになるでしょう。ここでカギとなるのは、人口動態のトレンドにおいて移民が極めて重要な要素となる、ということです。最も信頼性が高いとされる推計によると、米国では2023年におおよそ330万人の移民が流入しました。その後はやや減少し、2025年には250万人程度になると我々は想定しています。労働市場にこうした移民が加わったことで、FRBのパウエル議長が示したような「拡大するが逼迫していない経済」が生まれました。経済をリアルタイムでモニターしている人々のために言えば、ここ1年ほどでみられた失業率の上昇は、過去の景気サイクルとは異なり、景気後退の前触れではない、と我々は見ています。労働力市場における余剰もまた、こうした見方を裏付ける理由の一つと言えます。今後に目を向けると、我々の見方に対する主なリスク、すなわち世界中で考えられるリスクは、...
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    6 m
  • 米国選挙がM&Aの回復に水を差すことはない
    Aug 13 2024
    弊社米国公共政策ストラテジストのアリアナ・サルバトーレ(Ariana Salvatore)は、米国選挙の結果にかかわらずM&Aサイクルの力強い回復を予想しています。ただ、反トラスト法に対する懸念の高まりから、M&A案件に対する調査が今後厳しくなる可能性もあります。このエピソードを英語で聞く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は、モルガン・スタンレー米国公共政策ストラテジストのアリアナ・サルバトーレ(Ariana Salvatore)が、米国選挙の結果にかかわらずM&Aサイクルの力強い回復を予想する理由について解説します。このエピソードは8月13日にニューヨークで収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。2023年は経済規模全体と比較した企業の買収・合併(M&A)が世界的に過去30年余りで最低の水準となりました。ただ、このサイクルは現在大きく反転しつつあり、この「M&Aの復活」が政治によって止まることはないと弊社では見ています。その理由は、M&Aのサイクルが主に幅広い要因によって動いているためです。その要因とはマクロ経済、景気循環、CEOの景況感、金融環境などです。さらに具体的に言えば、件数の大幅な落ち込み、開かれた新規発行市場、新たに始まる利下げ、ボトムアップの業界トレンドはいずれもM&Aを回復させる強い追い風となり、政治の逆風を打ち消す力を持っています。今年のM&A件数はこれまでのところ増加しています。24年上期に公表されたM&A件数は23年上期と比べて2割増えており、複数年にわたる広範囲での回復の一部として今年のM&A件数は増加すると弊社では見ています。ただ、M&Aに影響を及ぼし得る要因のひとつとして、反トラスト規制が挙げられます。選挙結果によって反トラスト規制の実施にどのような影響があるのか、それが追い風となるのか、あるいは逆風となるのかを投資家が不安視するのは当然のことです。規制緩和に対する共和党の従来の姿勢を考えれば、トランプ氏が勝利した場合は反トラスト規制の執行は後退すると思うかもしれません。しかし、過去を振り返ると、第一次トランプ政権では多くのセクターで様々な反トラスト訴訟が相次ぎました。さらに、共和党と民主党の反トラスト規制の実施に対する姿勢がこのように一致する場面を私たちは目にしており、特に副大統領候補のバンス氏は連邦取引委員会の現職の委員長リナ・カーン氏がバイデン政権下で行った反トラスト規制を賞賛しています。その流れで行くと、選挙で誰が勝つかにかかわらず、一定の状況下ではM&Aが精査される可能性があると弊社は考えています。まず、セクターで言えば、両党ともテック企業の反トラスト規制に対するアプローチは共通しています。どのような政治思想を持つ有権者でも、議員が「巨大テック企業の分割」や過剰な支配力を持つと認められる企業を標的とすることに力を注ぐことを望んでいるようです。また、これに関しては地政学も非常に重要だと考えます。外国企業が関係するM&Aでは安全保障上の懸念が考慮されることが徐々に増えており、特に中国など、地政学的な懸念が絡む国の案件ではその傾向が強まっています。議員がM&A案件を詳しく調査する理由として、この類の懸念を引き合いに出す場面を実際目にしています。最後に、M&A案件に対する重要な支持層の態度も重要だと考えます。M&A案件が、例えば労働組合のような重要な有権者グループにどのような影響を及ぼすかが、その案件を特に詳しく調査するかどうかを決める重要な要素となる可能性があります。今後もM&Aの見通しに変化があれば、最新情報をお伝えしていきます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
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    6 m
  • 市場のドラマではなくデータに注目
    Aug 12 2024
    最近、市場の不安定さに注目が集まっています。今回は、弊社グローバルチーフエコノミストのセス・カーペンター(Seth Carpenter)が、データは見かけほど悪くない理由について解説します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社グローバルチーフエコノミストのセス・カーペンター(Seth Carpenter)が、中央銀行、日銀、FRB、経済データが市場に変動を引き起こした理由について解説します。このエピソードは8月12日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。もし、人生がギリシャ悲劇であったのであれば、これを暗示と呼ぶかもしれません。しかし、実際には、運悪く偶然が一致しただけだったのでしょう。日銀が金融政策を発表した時、日銀のウェブサイトは一時的にダウンしていました。結局のところ、日銀とFRBへの期待が先週の市場を動かしたといえます。日銀の金融政策決定会合の前は9月の利上げがコンセンサスの見方でしたが、実際には7月でした。市場は最初、利上げの決定自体には比較的落ち着いた反応を見せましたが、決定後の記者会見で植田総裁が利上げをさらに進める可能性に言及したことに驚きました。市場では多少の利上げは織り込み済みでしたが、植田総裁の発言でさらに8ベーシスポイントほど織り込みが進み、市場の変動が拡大しました。市場が不安定化した結果、内田副総裁は説明を軌道修正し、日銀は市場の状況に合わせており、日銀の戦略は基本的に従来通りであると強調しました。しかし、このように日銀の利上げサイクルへの注目度が高まった状態で、2日後に米国非農業部門雇用者数が発表されました。市場は日銀が利上げし、FRBが利下げすることを分かっていましたが、植田総裁の語調と米雇用者数が予想を大きく下回ったことをきっかけに、2つの別々だけれども関連のある市場リスクに火が点きました。米国の成長鈍化と円キャリートレードです。7月のFOMC(エフオーエムシー)は日銀の政策決定会合と同日に行われ、パウエル議長は9月の利下の可能性を示唆しました。第1四半期にインフレが予想を大幅に上回ったことから、FOMCは7月以前にはインフレを非常に重視していました。しかし、インフレが低下した結果、FRBの2つの責務のバランスが均衡してきました。FRBが成長とインフレの両方を重視するようになったことを市場は見逃しませんでした。その時に、7月の雇用者数が11万4,000人増と発表されました。この数字は最悪とは程遠い水準でしたが、重点が変化した直後に予想を下回る数字が発表されたことから、市場は過度に反応しました。弊社は基本的に米国景気のソフトランディングを見込んでおり、それについては月次レポートで詳しく述べています。さて、市場は通常、変化に注目して取引しますが、今回のサイクルでは変化だけでなく景気の水準にも注目すべきだと弊社は強調するようにしています。第2四半期のGDP成長率は2.6%でした。個人消費は2.3%伸びています。雇用者数は7月の数字が予想を下回ったにもかかわらず、3カ月の平均では月17万人増加しています。これらはひどく悪い数字とはいえません。失業率は4.3%で米国としては低い水準です。失業率は先月0.2%上昇しましたが、そのうちの0.17%は労働参加率が上昇したためで、労働市場が弱まったためではありません。このように、これらは過去を振り返る後ろ向きのデータですが、景気後退とは程遠い水準です。市場は当然ながら常に前を見ていますが、それでも最近の実績データは無視できません。弊社は景気がソフトランディングに向かっていると考えていますが、市場は景気がもっと急激に悪化するサインを見逃すまいと警戒しています。しかし、経済データは全く景気悪化の加速を示してはいません。弊社為替ストラテジー担当者はかなり前から、FRBの利下げと日銀の利上げは円高...
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  • より健康で長生きするためのヘルスケア
    Aug 8 2024
    今回は、欧州サステナビリティ・リサーチの責任者であるマイク・キャンフィールド(Mike Canfield)が、平均寿命の延びによって治療の根本的なアプローチがいかに受動的から主体的なものへと変わりつつあるのかについて解説します。このエピソードを英語で聴く。----- トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日は弊社欧州サステナビリティ・リサーチの責任者であるマイク・キャンフィールド(Mike Canfield)が、すべての人に影響を与える話題についてお話しします。健康を害することの経済的代償や、高齢化と平均寿命の延びが医療にどのような根本的変化をもたらしているのかについて解説します。このエピソードは8月8日にロンドンで収録されたものです。英語でお聴きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。先進国全体で人口が高齢化する中、医療制度は人々がより長生き、かつ健康でいられよう支援する必要があります。現在の制度は、一般的に急性疾患に重点を置いて構築されており、どちらかと言えば受動的です。つまり、最初から人々の健康を維持するのではなく、病気が明らかになってから臨床ケアや薬品を活用するのです。慢性疾患という負担が、健康上・経済上の最大の課題となりつつある今、私たちはますます医療制度の構造を変える必要に迫られています。本質的に重要なのは、高齢化社会において、健康を害することが社会に実際どれだけの損失を与えているのかということです。その真の意味を知るためには、G20の国・地域全体で50歳以上の労働者がすでに個人所得全体の3分の1を担っていることを念頭に置く必要があります。2035年にはこの層が全体の40%近くを稼ぐことになると予測されています。そう考えると、現在50~64歳の人口の間で予防可能な疾病は、すでにG20諸国に年間1兆ドル以上の生産性の損失をもたらしていることになります。もう一つ重要な数字があります。それは19%です。経済協力開発機構(OECD)の試算によれば、多様な年齢層で構成される労働力は、今後30年間で1人当たりGDPを19%引き上げることが可能です。つまり、労働者がより健康な状態を長く維持することが、より生産的、効率的で、より収益性の高い世界経済につながることは明らかです。また、現在の医療制度が病気への対処から予防へとシフトすれば、世界が受けられる恩恵が大きいことも明らかなのです。バイオ医薬品部門は、「スマート化学療法」やCRISPR(クリスパー、選択的な遺伝子の編集を可能にする技術)のような分野で、すでにいくつかの的を絞った新しい治療法に貢献しています。診断や、データサイエンス・材料科学などの分野へのAI導入、高度な遠隔医療においてはとても革新的なイノベーションが実現しており、その点ではバイオ医薬品やメドテック業界を評価することができます。これらの画期的技術は全て、より個別化され、的を絞った医療システムにつながります。ただ、これは正しい方向への大きな一歩ではあるものの、率直に言って、これだけで私たちが直面する幅広い高齢化の問題を解決することはできません。健康と予防に焦点を当てることで、究極的には病気の根本的な原因に対処し、最初から健康上の問題が生じないようにすることができます。世界中の政府が、病気の治療よりも予防医療の価値を認めつつあるのは明らかです。そして戦略としての疾病予防は基本的に、精神状態や栄養状態、あるいは睡眠やストレスなど、あらゆる面で健康を促進することを目的としています。グリーンスムージーや瞑想といったウェルネスのトレンドと混同するのは簡単かもしれませんが、細胞レベルでの健康増進の根本的なメリットは、もっと広く深い意味を持っています。2型糖尿病や心臓病など、国民全体の健康増進を支援することで、さまざまな慢性疾患の発生率を大幅に減らすことができます。また、医療システム全体の負担を減らし、最終的には健康寿命を延...
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