Episodios

  • 相場急変動の1週間を振り返る
    Aug 5 2024
    月曜日の株価急落は多くの要因が絡まっての結果ではありますが、弊社CIO兼チーフ米国株式ストラテジストマイク・ウィルソン(Mike Wilson)はこの後に起こりうる展開とどの時点でこの株価調整が買いの好機となるかについて論じています。このエピソードを英語で聴く。-----トランスクリプト -----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回ははモルガン・スタンレーのCIO兼チーフ米国株のチーフストラテジスト・マイク・ウィルソン(Mike Wilson)が、直近の株価急落と買いの好機であるのかどうかについて論じています。このエピソードは8月5日月曜日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。過去数週間で、世界の株式市場は今までとは全く異なる状況へと動き、主要株価指数の去年秋からの強い上昇トレンドは明らかに変転してしまいました。多くの市場参加者が軟調な雇用統計の発表にもかかわらず先週FRBが利下げを見送ったことのせいにしていますが、他方では日本円キャリートレードのテクニカルな巻き戻しも指摘されました。しかし、一歩引いて考えてみると、直近の株価上昇プロセスは去年10月の底値からの上昇基調から一旦大幅に売られた今年4月から始まりました。今年の夏で多くの銘柄や株価指数が高値更新へと株価が回復そして上昇となる中、相場のリーダーシップに関してはよりディフェンシブな姿勢となり、公益や消費安定、そして不動産といったセクターさえもここ数年間では好調なパフォーマンスとなっています。このポッドキャストで話してきたように、リーダーシップの変遷は第2四半期の軟調な経済指標と同時に起こっていたのです。景気軟化の指標発表は夏になっても相次ぎ、最も重要な雇用統計でも同じような結果となってしまいました。7月上旬に弊社が指摘したように、相場のローテーションが起きていたことは株価調整が入りやすい状況にあることの早期警告シグナルだったのです。結局のところ、いくつかの理由によって第3四半期は季節的には株価調整が起こりやすい時期でもあります。いつもと同じで今年も変わらずと言えます。ここで問いただすべきは次に起きることは何かと、この株価調整がいつ買いの好機になるかという点でしょう。非難の押し付け合いの中で見失ってしまっているのが、今年のバリュエーションが非常に割高な水準に到達してしまっているという単純な事実です。これは弊社リサーチで一貫して議論してきました。実際に、これを主要因として、弊社エコノミストの基本シナリオである景気軟着陸を想定したとしても、米国の主要株価指数においては来年の目標水準に対する上振れはないと弊社では考ています。つまり、株価は完璧で最高な状態を織り込んでしまっているのです。そして今、経済指標が悪化する中、FRBが積極的な利下げへと動かないのではと市場は神経質になり始めています。さらに、FRBは2年債利回りを注視する傾向にあり、過去1ヵ月間で2年債利回りは100bps(ベーシスポイント)の急低下となり、FFレート(エフエフレート)をおよそ170bps(ベーシスポイント)下回っています。つまり、市場は金利政策がタイト化しすぎであり、ガイダンスよりもアグレッシブな利下げが必要となっていることをFRBに示唆しているのです。FRBにとってのジレンマは次の会合まで6週間待たなければいけないことであり、現在のような相場環境であればあまりにも長すぎる時間です。市場はせっかちであることから、市場の望みをFRBが叶えてあげるまではボラティリティの高い相場が続くことになるでしょう。逆に、FRBが臨時会合で金利引き下げに出れば別の展開になって、そのようなことをすれば市場はもっと景気見通しに対し不安を抱くのではないかと私は考えています。結局のところ、短期的には脆弱な相場が続くと見ています。好調な景気指標又は政策支援に関して安堵できるようなFRBの姿勢があれば状況は改善...
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    7 m
  • 資金フローを追う
    Aug 1 2024
    今、グローバル市場のどこで今、資金が動いているのか、それが投資家にとってなぜ重要なのか。弊社チーフ・グローバル・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タン(Serena Tang)が解説します。このエピソードを英語で聞く。-- トランスクリプト --「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回はモルガン・スタンレーのチーフ・グローバル・クロスアセット・ストラテジスト、Serena Tang(セリーナ・タン)が、資金フローの考え方や、それがグローバル市場でどのように形成されるのか、なぜ投資家にとって重要なのかについてお話しします。このエピソードは8月1日木曜日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。金融業界では、投資家が自らの資金をどこに投じるべきかを見る際に、しばしば「フロー」という言葉を用います。投資信託や上場投資信託といった投資商品への資金の出入り、あるいは市場全体の資金の流入と流出を示す言葉です。フローを見ることで、投資家は市場の風がどこに吹いているのか、また、需要が今どこにあるのかを測ることができます。個人投資家であれ機関投資家であれ、市場のセンチメントと需要を知ることは有効なツールとなります。そこで今回は、これらの重要な「フロー」について簡単にご説明します。現在の需要や風向き、投資家にとっての意味について、知ることができるでしょう。まず、年初来の世界的な株価上昇にもかかわらず、債券から株式への投資ローテーション、すなわちポートフォリオの再編はまだ見られていません。債券への資金流入は依然として株式への資金流入を大きく上回っています。株価が大幅に下落しない限り、このトレンドがすぐに反転することはないと我々は考えています。加えて、大型株への資金流入は、今年に入ってから今なお、小型株への資金流入を上回っています。このトレンドは6月に一時的に反転しましたが、大型株へのフローの揺り戻しが再び起きています。投資家は有望な銘柄に投資先をシフトしており、株式ではセクターローテーションの兆しも見えていますが、確実に起きているとまでは言えない状況です。科学やテックセクターへの資金流入は、今年第1四半期から第2四半期にかけて大幅に減少しましたが、年初来では依然高い水準にあり、株式へのフロー全体の3分の1程度を占めています。素材や金融といった、よりシクリカルなセクターでは第1四半期や第2四半期に多くの資金が流入した一方で、消費財などのディフェンシブセクターでは、資金流出のペースが低下しました。グローバルな観点から、我々は特定の地域や市場における資金フローについても見ています。年初来、米国の株式市場にはおおよそ430億ドルの純資金が流入し、その他の株式市場からはおおよそ150億ドルが流出しています。これには例外も見られ、インド、韓国、台湾などでは年初から多額の資金が流入しています。商品別のフローについても考えてみましょう。例えば債券では、よりリスクの低い資産へのフロー、すなわちリスクオフ選好が見られています。高位格付けの投資適格ファンドには、年初来でおおよそ920億ドルの純資金流入があった一方で、米国債への流入は250億ドルにとどまっています。これでも米国債への流入は、第一四半期、第二四半期に比べると大幅に増えており、その一方で、ハイイールド債や低位格付けの投資適格社債への資金流入は年初に比べて減少しています。最後に、マネー・マーケット・ファンド、すなわち高位格付けの短期証券への投資についてです。各国の中央銀行が金融緩和を開始しており、投資家は短期利回りが低下すると見ていますが、持続的な資金流出にはまだ至っていません。むしろ、今年上半期にはおおよそ700億ドルの資金流入が見られました。FRBが利下げを開始すれば資金流出が始まるという見方には弊社も同意しますが、過去2回の利下げサイクルで...
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    7 m
  • クオリティと時価総額をめぐる変化
    Jul 30 2024
    景気サイクルの終盤であることと不透明感の持続を踏まえ、小型株などの景気敏感株には慎重姿勢を維持すべきとの見解を弊社CIO兼米国株株式チーフストラテジストのマイク・ウィルソン(Mike Wilson)が解説します。このエピソードを英語で聞く。--トランスクリプト--「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はモルガン・スタンレーのCIO兼米国株のチーフストラテジスト・マイク・ウィルソン(Mike Wilson)がバリュエーションが高い中での成長鈍化について解説します。このエピソードは7月30日火曜日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ここ数週間、株式市場では超大型株が売られる一方で低クオリティの小型株が値上がりし、これまでとは様相が異なっています。これは投資ポートフォリオにどう影響するでしょうか。市場は今後のファンダメンタルズについて何かを語っているのでしょうか。弊社の見立てでは、このローテーションは高クオリティの大型株をオーバーウェイトとし、低クオリティの小型株をアンダーウェイトとするポートフォリオ内で起きているデグロッシングが大きな原因です。弊社はこれまで長い間、高クオリティの大型株を推奨し、低クオリティ株と小型株を避けてきました。この見解は変わりませんが、今は小型株のファンダメンタルズとテクニカル面を注視しており、小型株の最近の動きの速さに注目しています。ただ、当面はこれまで通り高クオリティ銘柄を選好し、小型株のような景気に敏感な銘柄を避けた方がリスク・リワード面で有利だと考えます。その理由はシンプルで、景気サイクルの終盤は成長が鈍り、大半の企業は経済成長が利益の成長につながらず、そういう状況では高クオリティの大型株がアウトパフォームするためです。経済全体の多くの不均衡を増幅している要因は財政赤字の拡大です。弊社の見解では、財政支出が民間企業や消費者の資金需要を抑制するクラウディングアウトが始まると、リターンは減少します。この1年間述べてきたように、このクラウディングアウトは経済と株式市場の両方のパフォーマンスが二分化する原因となっていると同時に、FRBの金利政策を本来あるべき姿よりも引き締め気味にしている可能性があります。マクロ経済指標は強弱まちまちで、家計調査が示す実態は事業所の集計に基づく非農業部門雇用者数よりも厳しいことから、労働市場の実際の強さに関する議論が高まっています。結局、マクロ経済的には安定しているものの減速しているサイクル終盤にあります。しかし、ミクロ的にはそれほど安定しておらず、消費者関連を中心に成長の大幅な減速が示されています。具体的に言えば、多くの景気敏感セクターでは最近リビジョン・インデックスが悪化しています。金融株は明るさが見えますが、消費者動向の悪化が続けば明るさは短命に終わるでしょう。弊社は引き続き高クオリティ株を選好しますが、テック株のようなグロース色の強い銘柄よりも公益事業、生活必需品、REITといったディフェンシブ・セクターをより一層重視します。グロース株については超大型テック株の一部でバリュエーションと利益の質が論点になっています。このほかに現在の株価の重石となっている変数はバリュエーションで、過去20年で最も高い時の十分の一ほどです。注目すべきこととして、バリュエーションはリビジョン・インデックスに非常に敏感に反応します。リビジョン・インデックスが前回マイナスとなったのは去年の秋です。23年7月から10月の間に市場のマルチプルは20倍から17倍に切り下がりました。2週間前のマルチプルは22倍で、現在は21倍です。弊社の予想通りリビジョン・インデックスの悪化が続けば、バリュエーションはさらに切り下がるでしょう。弊社は12カ月後の目標マルチプルを基本ケースで19倍としており、株式市場全般のリスク・リワードは現在かなり不良です。最後...
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    5 m
  • アジア市場は米国選挙をどう見るか
    Jul 24 2024
    米国選挙で予想される関税引き上げ等のシナリオからアジアの経済と市場が受ける影響を弊社主席アジアエコノミストの Chetan Ahya(チェタン・アハヤ)が解説します。このエピソードを英語で聞く。--トランスクリプト--「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回はモルガン・スタンレー主席アジアエコノミストの Chetan Ahya(チェタン・アハヤ)が米国大統領選挙のアジアへの影響について解説します。このエピソードは7月24日水曜日に香港にて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。米国大統領選が進むにつれ、世界の市場はトランプ氏が勝利する可能性について評価し始めています。投資家が特に気にしているのは、これがアジアにどう影響するかです。弊社は米国の選挙結果が3つの経路を通じてアジアに重要な影響を及ぼすと考えています。そのひとつ目は、金融環境、つまり米ドルと金利が選挙前後でどう動くかです。ふたつ目は、関税です。そして3つ目が米国の成長率、これは世界成長率とアジアの輸出品に対するエンド需要を左右します。この3大懸案から考えられるのは、関税引き上げによる成長の下振れです。2018年を振り返ると、関税の直接的な効果というのは、圧倒的な役割を果たしてマクロ経済を左右するというようなものではなく、むしろ企業心理や設備投資、世界需要、金融環境を通じて伝播していくものだと言えるでしょう。ここで2つのシナリオを考えてみましょう。まず、トランプ氏が勝利して「ねじれ議会」となった場合、中国はアジアで最も関税の影響を受けると考えられます。このシナリオでは2つの結果が考えられます。米国が中国だけに関税を課すケースと、米国が世界のすべての国に10%の関税を課すケースです。中国からの輸入品に60%の関税を課す場合、アジアの成長率は大きな打撃を受け、デフレに陥るでしょう。中国はアジアの中でも最も大きなリスクを抱えた状態が続くでしょう。他のアジア諸国はすでに中国への輸出を時間をかけて減らしており、サプライチェーンから中国を外して多様化する動きから恩恵を受ける可能性があります。米国が世界のすべての国からの輸入品に10%の関税を課す場合、中国とアジアはさらに大きな下振れが予想されます。この場合は、関税が輸出に直接影響を及ぼすだけでなく、企業心理や設備投資、貿易にも深刻な影響を及ぼし、成長はさらに大きく下振れるでしょう。企業セクターはフレンドショアリングの継続ではなく、オンショアリングを検討しなければならないため、中国だけに関税を課す場合と比べて企業心理へのダメージは大きくなると思われます。2つ目のシナリオとして、トランプ氏が勝利して共和党が圧勝した場合は、関税の影響に加えて財政政策がどのようになるか、それに伴って米国債利回りと米ドルがどう変化するかに注意する必要があります。つまり、関税の影響以上に、金融環境の引き締まりがアジアの成長率をさらに下押すものと考えられます。アジアの政策立案者はこのようなシナリオにどう対応するでしょうか。関税が課せられれば、アジア通貨は短期的に低下圧力を受ける可能性が高いと考えます。通貨安は関税の悪影響を一部打ち消すという意味では役に立ちますが、中央銀行による利下げは制限されるでしょう。この文脈では最初の政策対応としてまず財政を緩和し、通貨が落ち着いた後に金利を引き下げるものと予想します。注目すべきは、このサイクルにおけるアジアの金融政策の余地は過去のサイクルと比べてかなり狭いということです。アジアの名目金利は大体、米国金利よりもそもそも低いためです。もちろん、状況は米国選挙までの数カ月間に変化します。今後も重要な展開があれば新たな情報をお伝えしていきます。最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、...
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    6 m
  • 60・40ポートフォリオを超える戦略はあるのか?
    Jul 16 2024
    60・40ポートフォリオは、幾何かの手直しさえすれば優れたパフォーマンスをこれからも維持することができると考える理由について、弊社チーフ・グローバル・クロスアセット・ストラテジストが解説します。このエピソードを英語で聴く方はこちら。-----トランスクリプト-----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。本日はモルガン・スタンレーのチーフ・グローバル・クロスアセット・ストラテジストのSerena Tang(セレナ・タン)が、60・40ポートフォリオ戦略の将来性についてお話しします。このエピソードは7月16日木曜日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。投資家の皆様から、次のような質問をよく頂きます。株式を60パーセント、債券を40パーセントの割合で配分する60・40ポートフォリオは終わったのか?と。何せ、この戦略の過去2年間のリターンはこの数十年間で最も低いのですから、皆様がそう考えるのも無理のないことでしょう。私たちは現在、広く採用されてきたこの戦略を疑問視する考えに根拠が全くないとは考えていませんが、いささか過剰であることに間違いはないと思っています。ただし、この種のポートフォリオ戦略の株式と債券の適正配分比率については、見直す必要があると考えてもいます。ポートフォリオのリスクを低減することを目的として、株式に60パーセント、債券に40パーセントの割合で投資するポートフォリオ戦略は、1950年代のモダンポートフォリオ理論から発展したものです。この戦略が狙い通りに機能するためには、債券のボラティリティが株式を下回り、株式と債券のリターンの相関係数が1未満である条件を満たす必要があります。1だと、株式と債券との間に完全な正の相関があることになるからです。これまでは、成長率とインフレ率が長らく歩調を合わせるように上下していたため、株式と債券の相関係数も長い間1を大きく下回っていました。それが何の関係があるんだと、おっしゃりたい方もおられるでしょう。説明するなら、力強い成長をバックに株式が上昇する環境では、一般的に物価も上昇します。つまり、名目利回りは高い水準のままで債券リターンは損なわれます。そしてリセッション環境ではその逆のことが起こります。すなわち、いずれの環境においても、株式と債券のリターンの負の相関関係は、成長と物価の正の相関関係によってもたらされているのです。60・40ポートフォリオ戦略が何十年もの長い間、特にボラティリティが低く、成長と物価の正の相関関係が高く、株式と債券のリターンの相関関係が低かった1990年代から2010年代にかけて上手く機能したのは、こうした理由によります。投資家の方々にとっては残念なことですが、ここ数年間はそうした条件が満たされていないのです。パンデミックのもたらした極めて異例なマクロ環境が成長と物価の関係性を壊し、その結果として株式と債券の関係性が破綻したことで、ここ数年間の債券ボラティリティが急速に高まり、債券リターンが数十年来の低い水準へと低下したためです。しかし、こうした変化は緩やかに正常化すると私たちは予想しており、60・40ポートフォリオのような戦略は再び機能するようになると考えています。ただし、これから先の株式と債券の相関関係の度合や債券ボラティリティの水準は、これまでとはかなり異なるようになるかもしれません。特に量的緩和期と比べると、明らかに異なってくるでしょう。それでも債券のリスク特性が株式より低い限り -実際のところ、そうならないことを示す材料はほとんどないのですが- 債券はポートフォリオを分散化させる優れた資産クラスになり続けると考えます。ここで投資家の方々に考えて頂きたい重要な問題があります。「株式と債券の相関関係をこの先左右する要因はが何か?」という問題です。私たちの考えでは、この二つの資産クラスの長期的な相関性は、先ほどお話...
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    7 m
  • ビジネス旅行者が増加している
    Jul 11 2024

    弊社の空運・航空担当アナリストが、年央に実施した法人旅行に関する調査結果のポイントをご紹介します。今回の調査では、2024年下期に関していくつかポジティブなトレンドが見られました。

    このエピソードを英語で聴く方はこちら。


    -----トランスクリプト-----


    「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は弊社の空運・航空担当アナリスト、Ravi Shanker(ラヴィ・シャンカー)が法人旅行に関する最新情報をお届けします。このエピソードは7月11日木曜日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

    会議を目的として飛行機で出張するビジネス旅行者が増えています。実際、弊社が実施した法人旅行調査では、旅行日程がコロナ禍以前の水準に回復したとする回答が、過去最大の50%になりました。同じように法人旅行の予算は、2024年は前年比で5%から7%の増加、2025年は約6%増加すると予想されます。これは、法人旅行向けの航空便、ホテル、自動車の予約が大幅に増えることを意味しています。

    興味深いことに、今回は2021年以降の調査では初めて、中小企業と比較してより大きい企業の方が、法人旅行需要に対して楽観的になっています。

    オンライン会議へのシフトの動きは今後2年間、横這いになる見込みです。企業は引き続き2024年と2025年の出張の12%から13%がオンライン会議に置き換わると予想しています。その後について、回答者は2025年末までこうした水準が維持されると予想しており、ある程度は恒久的にシフトするとの弊社見解が裏付けられました。

    米国の航空会社については、法人向けに復調の兆しが見え始めています。いくつかの米国航空会社は、2023年末に数量ベースでかなり停滞した後、第1四半期の顕著な改善を指摘しています。また、これまでの調査結果とは逆に、コロナ禍後の回復を最初に牽引した中小企業よりも、大企業の方が速いペースで回復しています。

    また、こうした航空会社に対する需要のポジティブなトレンドは、米国航空宇宙株を割安と見る弊社見解を支持しています。世界の航空交通量は既にコロナ禍以前のレベルに到達していますが、コロナ禍がなかった場合のトレンド線を約32%下回っており、まだ成長の余地が残っています。

    ビジネス航空については、調査参加者の大多数は、プライベートジェットによる出張を変更する計画はないと回答しており、プライベートジェットの利用は堅調かつ安定的に続く見込みです。金利が上昇した場合や景気が鈍化した場合は、プライベートジェットに対する需要が減速する可能性はあります。しかし、引き続き業界にキャパシティの余剰はほとんどなく、旺盛な航空機需要が持続しているため、これまでのところそうなっていません。

    弊社の欧州担当アナリストによれば、短期的な指標は良好だが、欧州における調査回答の40%は、現在、法人旅行件数が2019年の水準まで回復しないと予想しています。 これは、米国に比べて生彩を欠くように見える欧州の法人需要の中長期的な成長見通しにとって気掛かりです。

    弊社ではプライベートジェット、商業航空、オンライン会議のいずれについても、法人旅行のトレンドを今後も注視し、最新の状況をお伝えして参ります。

    最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。







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    5 m
  • 2024年米国選挙:インフレの影響
    Jul 8 2024
    インフレは世界的に有権者が選挙で重視する問題となっています。インフレが来たる米国大統領選挙に及ぼし得る影響と、投資家がこの選挙戦の結果にどう反応するかを弊社のCIO兼チーフ米国株式ストラテジストが解説します。このエピソードを英語で聴く方はこちら。-----トランスクリプト-----「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は選挙が政策と市場に及ぼす影響について、モルガン・スタンレーのCIO兼チーフ米国株式ストラテジストであるMike Wilson(マイク・ウィルソン)が解説します。このエピソードは7月8日月曜日にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。世界で行われた重要な選挙の中には政策と市場に大きな影響を及ぼすものがいくつかあります。とりわけインド、メキシコ、英国、フランスの選挙は投資家の関心を集めました。これらの選挙はそれぞれ国によって異なりますが、経済格差と移民問題が重視されつつあるようです。経済格差はここ数十年で徐々に拡大していましたが、コロナ禍とコロナ対応の政策をきっかけに多くの国民が経済格差と将来に対する一般的な不安感の水準に強く注目するようになりました。ごく普通の人々に大きな悪影響を及ぼす変化はいろいろありますが、インフレは特に困難なものとして際立っています。物価の変動率は2022年以降次第に低下しているとはいえ、多数の商品・サービス価格は多くの人々にとって依然として厳しい水準にあります。食品、住宅、医療、保険、光熱費といった基礎的項目の価格はコロナ禍前と比べて3割から5割上昇しています。これらの物価上昇の一部は住宅資産や金融資産の値上がりで賄われていますが、これができるのは資産を持つ人に限られます。また、固定金利の住宅ローンも物価と金利の上昇を補う上で重要になっています。多くの人はこの歴史的低金利の既存の住宅ローンと市場金利の差を利用して自然に利鞘を稼いでいます。ただし、これができるのも多額の現金を持っている人に限られます。このような環境では、来たる米国選挙でも他の諸国と同じように、インフレが重要な意味をもつ可能性が高まるものと考えます。先の米大統領選挙討論会をきっかけに、投資家からはトランプ氏の勝利あるいは共和党の圧勝となった場合に市場にどのような影響が及ぶかという質問が寄せられています。市場の初期的な反応と弊社顧客との対話から判断すると、このような選挙結果となった場合は成長率と長期金利の両方が上昇する可能性があるとの見方で一致します。このため、株式ポートフォリオをバリュー株と景気敏感株に組み替える意欲が高まっており、このような動きは2016年の選挙前にも見られました。この背景には市場がトランプ政権下での財政拡大、リフレーション、規制緩和に期待していることが挙げられます。しかし、いくつか重要な点を考慮する必要があるでしょう。ひとつは、弊社の見るところ、現在は2016年と比べて景気サイクルがより成熟しており、その証拠としてコンファレンスボードの景気先行指数は2年半にわたり低下基調にあり、逆イールドも2年近く続いています。歴史的にサイクル終盤の環境では市場はクオリティと流動性を高く評価していることから、引き続き高クオリティ株を選好し、景気に敏感な小型株を避けることを弊社は推奨しており、2016年にはこれがうまく機能しました。簡潔に言えば、選挙結果よりも現在の景気循環の方が重要です。したがって、景気敏感株は銘柄選択を重視すべきと考えます。2つ目に、2016年には市場がリフレ戦略を歓迎しました。当時はインフレが今日(こんにち)のようには消費者の重荷とならず、米国景気は世界的な製造業不況から回復しつつあり、その回復の助けとなったのが財政支持的/リフレ政策体制でした。一方、前に述べたように、現在はインフレが消費者にとって大きな重荷となっており、債券市場では財政の...
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    6 m
  • 中央銀行でも時に判断を誤る理由
    Jul 3 2024

    中央銀行は金融政策や景気変動の緩和において重要な役割を果たしています。しかし、支配力があるにもかかわらず、景気の波の中で素早く舵を切ることができない理由があります。この点について、弊社コーポレートクレジットリサーチ担当者が解説します。

    このエピソードを英語で聴く方はこちら。


    -----トランスクリプト-----


    「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

    今回はモルガン・スタンレーのコーポレートクレジットリサーチ責任者であるAndrew Sheets(アンドリュー・シーツ)が、景気の波の中を舵取りする中央銀行についてお話しします。このエピソードは7月3日水曜日にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

    中央銀行は金融市場の中で最も影響力のある機関のひとつであり、世界中の投資家が中央銀行の発する言葉と、次の動きに注目しています。もしそうであるなら、近年は特にそうだったように思います。中央銀行はコロナ禍の最中にまず債券市場に積極的に介入し、その後、過去40年で最速のペースで利上げを実施したためです。

    さらに言えば、これをもう一歩進めることもできます。投資家の多くは中央銀行が市場で最も影響力の高い機関だと言うでしょう。その他はすべて二の次だと。

    しかし、この市場と経済に対するFRBの支配力という見方には注意すべき点があります。FRBは持てる力のすべてを尽くしても、1990年の景気後退を回避できませんでした。ITバブルの崩壊や、2001年の景気後退も回避できませんでした。2007年から2009年にかけての世界金融危機と大不況も回避できませんでした。過去35年間の信用損失の大部分はこれらの時期に発生しています。つまり、中央銀行が持てる力のすべてを尽くしても、このような景気後退や、それに伴う信用のデフォルトサイクルは繰り返し発生しています。

    その理由は多岐にわたり、議論の余地があります。ただ、重要な点は、経済はいわば巨大タンカーのようなもので、迅速な方向転換が難しいことにあります。事前に十分な調整が必要で、さらには危険の徴候がはっきりと見えるかなり前に舵を切る必要がある場合が多いのです。

    FRBは現在も景気のブレーキを踏み続けています。政策金利はFRBが景気をふかしも冷やしもしないと考える、いわゆる中立金利を大幅に上回っています。いわばブレーキペダルに足を乗せたままにしている理由は、今年に入ってインフレ率がまだ予想を上回っているからです。

    しかし、インフレはここ2カ月間で急速に鈍化しています。弊社エコノミストの予想では、この傾向は今年下期に加速する見通しで、最終的にFRBは9月と11月と12月に利下げを実施すると思われます。

    経済指標が強いうちは高い金利とインフレの鈍化が問題になることはありません。ただ、経済指標はこのところ軟化しています。指標の軟化が続けば、債券投資家は中央銀行がすでに過去のデータである高いインフレ率を過度に重視し、この先景気が鈍化する可能性を軽視していることを懸念すると思われます。経済という船の舵を切るには遅すぎるかもしれないという心配が再来するでしょう。

    強調しておきますが、このようなシナリオになる可能性は今のところは低いでしょう。ただ、中央銀行の反応の遅さは、これまで幾度も繰り返されたように、クレジットの最大の弱点です。夏に向けて、経済指標が持ちこたえることがますます重要になります。

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